アールトは、戦後すぐにコンペに応募し、1949年アールトの最高傑作であるセイナッ
ツァロ村役場、1951年には20年間建設が継続するユバスキュラ大学キャンパスを勝ち
取ります。
「セイナッツァロ村役場」は、人口3000人の小さな村の役場、図書館、銀行などが入
るコンプレックス(集合体)です。
私が訪問したのが20年前。全くと言っていいくらい何も変わっていませんでした。と
いうより、人々に愛され使い続けて来た輝きと温かみがありました。
変わっていたところは、用途だけ。以前にはなかったアールトのギャラリーとミュー
ジアムショップのようなコーナーが出来ていました。
この建物は戦後間もないとき、資材の不足している時の建設でしたので、鉄筋コンク
リートではなく、レンガ造を主体にした建築となっています。しかしその後のアール
トの仕事に大きく影響しレンガ積み仕上げの一連の建築が続いて行くのです。
大きな樹木が茂る林の一角に出来たこのコンプレックス。
地面の起伏にそってヒューマンスケールの集合体が出来ています。
建物に囲まれた中庭には、池があり、平屋建ての廊下に囲まれ本当にプライベートな
庭にいるような感じがします。
一番高いのは議会の会議室。それがシンボルとなっています。平面図を見ても美しさ
がにじみ出てきます。実際の建物を見るともっと美しさが感じられます。本当に、
「いい空気感」があるのです。
この他に、アールト20代の仕事、「ムーラメの教会」「労働会館(ホール)」を見学し、
後は「アールト美術館」「ユバスキュラ大学キャンパス」「夏の家」を訪問しました。
とくに、「夏の家」はフィンランドらしい森と湖に囲まれた土地柄が良く理解できる
シチュエーションでした。参加者の方々には一番フィンランドを感じる場となったの
ではないでしょうか。