東京芸大奥村研究室の助手、木曽三岳奥村設計所のスタッフとして奥村昭雄さんの最も近いところにいた丸谷博男さん。後にOMソーラーシステムに結実する空気式集熱に取り組んだ最初の住宅であり、ソーラー研に発展するきっかけともなった「大泉学園の家」(1979年竣工)を担当するなど、パッシブソーラーに向き合って設計の道を歩んできた。
1992年に竣工したこの宮城野山荘は、箱根強羅温泉を正面に望む宮城野の高台に建つ。断続的に使われる別荘建築だからこそ、寒い冬ほど暖かく迎えてほしいし、留守の間も通風があってほしい。冬に訪れたときの冷たさや梅雨時のカビはつらいものだ。OMソーラーがその対策としてまさにうってつけのシステムであることを、丸谷さんはこの建物で見せてくれた。
見所は、大屋根に包まれた光あふれる内部空間。棟の北側に設けたトップライトは、中央を貫く大きな吹き抜けを介して、のびやかで明るい屋内を生み出している。夜間や曇りの日には吹き抜けを閉じる障子が付けられていて、補助暖房を節約するばかりか、空間の印象を一変させる。トップライトは棟を挟んでOMのガラス集熱面と対称的にデザインされ、それは、民家の棟飾りをイメージしたものという。
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